呼吸の話(2)

・・・気功の集い2018.5月通信から
 気功の三要素は意識と動作と呼吸であり、生命進化の歴史を辿れば呼吸が健康維持増進に果たす役割も理解出来るかと。人は死ねば最終的には朽ちて元素に還る。動物も植物も鉱物もその姿は元素の集まりだ。

 人の体は60兆個の細胞でできていると言われているが、臓器を作っている細胞を辿れば、元素(原子核・陽子・電子)の世界に行き着く。その元素も粒子と波動で成り立っていると量子力学は解く。人体を小宇宙と見なす東洋医学の考え方と合致する。人の体も原子核と電子で満ちあふれている。電気と磁気の相互作用も地上にあふれている。電気が動けば磁気が発生し、磁気が動けば電気が発生する。それが電気磁気学理論。人体も、筋肉を動かせば電流が発生し、電流を流せば筋肉が動く。ハリ治療で低周波パルスを流すとその様子を観察できる。今では筋電図や心電図、脳波を測定して人体の状態を推測できるようになったが、呼吸で自律神経を調整できることも証明されている。
2018

 健康で元気に過ごす為には周りの環境と無縁でいるわけにもいかない。「呼吸の成り立ち」をネコザメとドチザメによって確認した実験を裏面で紹介します。       

ネコザメとドジザメを陸上生活になじませる実験は何を意味するか?

 人間の乳児は乳を吸いながら鼻で呼吸ができるように鼻腔と気管が鼻の奥(後鼻腔の軟口蓋部)で直接つながっている。そして、言葉を話すことにより喉頭蓋軟骨が少しずつ縮小して、ヒトは口でも呼吸ができるようになった。ヒトが話す時は必ず口から空気を出す。口から空気を出せないブタやウマはブーブー、ヒヒーンというように同じ鳴き声しか出せない。

 ネコザメを1日1時間陸に上げ、陸上生活に適応させると、肺になる部分である含気嚢が囲心腔にできてくる。ネコザメの舌はエラの筋肉で出来ており、心臓までが舌に含まれる。ドチザメを陸に上げると肺になる部分の含気嚢が爬虫類や鳥類と同様に骨盤域まで伸びてくる。ネコザメから哺乳動物が発生する過程のエラの変化を辿ると、最初にエラが内耳になる。舌と顔と頭にある筋肉は全部、心臓と同じ筋肉で、由来は呼吸筋肉である横隔膜と連動している。哺乳類の耳は呼吸孔という窓を持ったエラの機能が残っている。耳は外とつながっているエラの姿を留めている唯一の器官である。

 動物と高等植物の由来は同じで、ホヤ(脊椎動物の近縁とされる生物学の研究材料)でその形跡を確認できる。動物発生の過程で最初にできる器官が腸管で、それと繋っているのが「胃腸」である。呼吸の原始的姿は中心部分が動物の特徴(動くこと)を制御するエラのシステムである。自分で動くのをやめると筋肉を失う。自分で動くのをやめた動物が植物になった。動くことをやめなかった動物には神経系ができる。神経は筋肉のシステムであり、筋肉と神経は同時に発生する。神経の最も重要な機能は感覚の受容であり、感覚器官が腸管の要求を実現するため外界を認識し、筋肉に指令を出す。制御器官にはホルモンと神経系の二重支配があり副腎がホルモン、脳髄が神経系の指令的役割を勤めている。ホルモンは遺伝子の引き金を引いて、直接細胞をコントロールする。

 呼吸中枢は延髄にあるが、呼吸は外呼吸だけではない。感覚器官とホルモンの関係を取り結ぶのがエラのシステムからできた脳下垂体である。脳下垂体は半分が神経組織から、半分はエラの上皮からできている。この脳下垂体がすべての細胞を直接コントロールする。従って、細胞呼吸まで考えないと呼吸の本質は語れない。今の西洋医学の呼吸器科では、肺しか扱っていない。耳も鼻も呼吸器なのに、耳や鼻や皮膚や細胞と肺を完全に分離して扱っている。それでは治せるはずの病気も治せない。生命の成り立ちは細胞呼吸のミトコンドリアまでひっくるめて考え、病状に対処することが肝要である。
 ネコザメとドチザメの実験は人体を小宇宙と捉える東洋医学的思想を考える一端になるかと。